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”天気の子”感想 なぜ、帆高は”なんとなく”救われてしまったのか

感想

いろいろな人に勧められるがままに見てきた。

ネタバレ注意。


俺が今まで見た新海誠作品は2つ、”秒速5センチメートル”と”君の名は”である。

どちらも、すごい好き、というわけではなく、秒速5センチメートルはそこまで、君の名は面白かった、けど2回めはいいかな、ぐらい、つまるところ、新海ファンボーイということもなく、流行っている映画があるので見に行った、ぐらいの気分だった。


まず、第1印象として、圧倒された。


映像美とか、脚本とか、そういうのではなく、単純に、時の流れに圧倒された。

ゆっくり、連続性、そういった物語を好む俺は、大事なところは描写をして、どうでもいいところは適当に省く、曖昧にする、あれ、こんなに新海誠って早い作品を書くのかな、ってちょっとびっくりした。

新海誠が、こういう4章構成みたいな、音楽で区切って、起承転結みたいに、わかりやすく展開していく手法は、毎回のことなのだが、今回は1章ごとに起承転結×4みたいな感じだった。物語が4回分ぐらいあった。

なんでだろう、考えてみると、今回はほとんど舞台が東京で、それも新宿近辺で、空間の移動がなかったのに、そこそこの大きさの物語を2時間足らずで畳もうとしていた。

空間の移動は、目新しさとともに、時の流れの感じ方をゆるやかにしてくれる。

今まで見てきた新海誠の作品が、3泊4日の旅行みたいな物語だったとすれば、天気の子は、同じ高校での1年をダーっと描いたような、そんな物語だった。



第2印象として、なんで、なんとなくハッピーエンド風に占めたの?、という疑問


”天気の子”が”君の名は"とは構造が異なっていたことは自明である。


瀧くんは、少女を救って、世界も救った、いわゆる望まれた少年だったとすれば、帆高くんは、少女を救うか、世界を救うか、どちらかを迫られた、結果的に少女を救い、世界を救わなかった彼は、望まれなかった少年だったのだろう。もし彼が何をしなければ、彼と関わらなければ、もしかしたら、すべての人々に今より幸せな結末が待っていたのかもしれない。


そして、帆高くんは罰を受け、3年後、ようやく陽菜と再会することができた。

あれ、これはどこかで見たことがあるぞ、あ、”君の名は”だ。


ん?


構造は異なっていても、結末が同じなのはどういうことなのだろう。


帆高くんは陽菜を選び、世界を救わなかった、そのあと世界がどうなったのかは、エピローグ的なところで明らかになっている。東京は文字通り、非常に痛々しいものになっていた。


しかし、人々が壊れた世界に順応しているように描写し、帆高くんがめちゃくちゃにした、帆高くんの周囲の人々も、なんとなく救われている、あれあれ、物語を間違えてしまったのかな?

身を潜めるようにといいつつ、警察に観察されていることが、なんとなく受容されて、かっこいい、みたいな感じで、高校の卒業式で女子生徒から好意的な視線を受けていることもなんだかな、と思った。おばあちゃんの家が沈んでしまった、ちょっと悲しい描写はあったけれども。


どちらかというと、天気の子は、陽菜を救った帆高くんが、目が覚めて、最初に見たものは、沈みゆく東京、壊れていく世界、呆然とする彼、でも、彼女とのトレードだから仕方がないよね、でもなんかモヤモヤするな、みたいな、どこか救いのない、ちょっとしたトゥルーエンドな感じで終わるべきだと感じていた。


なのに、エピローグで、世界は壊れたはずなのに、帆高くんの周りの世界は救われた、ように描写されていたように感じる。彼は自分の周りを犠牲にしようとしても(その証拠に、夏美ちゃんのメットを投げ捨てたり、陽菜を助けに行くシーンで圭介に銃を向けている)、少女を救おうとしていたし、そのトレードで、帆高くんの周りの世界も何かしらの形で犠牲になるべきだったのに、なんとなくハッピーエンドで終わってしまった。


なぜこうなってしまったのか。

簡単だ、新海誠が、明らかに大衆向けに作ろうとしたこと、これが一番の要因である。

もし、俺の考えたような、あるいはそうでなくても、少年が少女と引き換えに世界を破壊した物語、で終わらせたら、賛否両論が飛び交い、新海誠の作品は、君の名はだけが特別で、やっぱり大衆向けじゃないな、みたいなことをみんな考えると思う。


しかし、世界は破壊したけど、描写の力で、なんとなくハッピーエンドで終わらせることによって、なんとなく大衆向けの作品に仕上げた。俺は、次回も、また見てくれよな、というメッセージを受け取ったように感じた。


おそらく、次の新海誠作品も、大いに世界を賑わせるだろう。しかし、それで今回の天気の子のような、少しいびつな作品が作られてしまうのは、ちょっと悲しい。

帆高が、少女と引き換えに、世界に犠牲にしたように、新海誠も、大衆受けの代わりに、トゥルーエンドを犠牲にしなければいけなかった。

もし、大衆受けを狙うなら、君の名は、のような、みんながみんなハッピーエンドでよかったね、終わり!の物語以外、どこかぎこちなくなる。今回は、どちらかというと、人を選ぶ作品のような脚本だったのに、なんとなく大衆向けにしたことで、おかしくなってしまったように感じた。

とはいいつつも

最後のエピローグ以外は、普通によかった。あぁ新海誠だな、と思いながら見ていた。

次回作は、もう少し一貫した描写の物語を期待したい。

その他

・”君の名は”とクロスオーバーしていたことは知らなかったけど、アクセサリーショップの店員が三葉であることはすぐにわかった。瀧くんは全くわからなかった。あぁこういうところも、なんとなく大衆向けなんやな。

・カナとアヤネのところのからくりはすぐに気づいたけど、アヤネを誰が演じているかはわからなかった。そろそろ終わりかもしれん。

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