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男性作家と女性作家の違いから見る、「彼女、お借りします」に抱く期待と不安について

概要

「彼女、お借りします」は、週刊少年マガジンで絶賛連載中のラブコメである。

ちょうど今(2020/08/17現在)、アニメ化もしている。動画配信サービスで見れることもあるのではないか。

さて、なぜ俺がいきなりこのような記事を書いたといえば、連載開始当初から「彼女、お借りします」という作品に違和感に近い何かを感じていて、それがなんとなくわかったので、軽くまとめようという算段である。

男性作家と女性作家の描くラブコメの違い

突然だが、この違いについて、みなさんは考えたことがあるだろうか?

俺は、大きな違いが少なくとも2つはあると思う。

まず、第一に美化するものの違いである。男性作家は容姿を除いても女性登場人物を完璧に近い人間として描写する傾向にあり、女性作家も容姿を除いても男性登場人物を完璧に近い人間として描写する傾向にある。

これは至極当然のようなものだ。男が理想の女を書こうとすれば、女が理想の男を書こうとすれば、完璧超人が出来上がる。

これに関しては、俺はいい面とわるい面があると思う。

ある種、漫画というのは理想的な世界であり、そこでわざわざ現実のどこにでもいるような人たちと対面したくはないだろう。二次元はそういう現実的なものから逃避することができる、というのが強みの1つである。

ただ欠点もあると思う。これはラブコメに限った話になるのだが、どうも完璧すぎて、現実離れしすぎて、人間らしさがなく、感情移入が難しいときがある。

2つ目。男性作家のラブコメでは、お互いが好きであることを予め明確にした上で、イベントを積み重ねていく手法が見られ、女性作家のラブコメでは、お互いが好きであることを示すために、イベントを積み重ねていく手法がよく見られる。

なんというか、男性は好きという気持ちがどうやって生まれるかは重要視していなくて、女性は重要視している、ような気がする。これが手法の違いに現れてくるのだと思う。


ところで、俺は自分が女性的な思考回路をしているとは思わないが(そもそも女性的な思考回路とはなんぞやという話になるが)、概して合理性を求める俺は、なぜ好きになったかにどことなく執着するのである。だから、慎重に積み重ねて、恋を成立させていく作品のほうが好きだ。つまり、女性作家の描くラブコメのほうがより好きである。

特に、女性作家が描く「男性主人公」のラブコメは、どれよりも優れていると感じる。男が主人公だから、女性作家特有の男美化描写が大きく減り、女性作家に優れている、人間らしい女性の描写+好きという気持ちの理由の明確さだけが残るからだ。

軽く思いついただけでも、「めぞん一刻」「とらドラ」「僕らはみんな河合荘」などが挙げられる。どれもこれも読んで後悔しない名作揃いだ。

「彼女、お借りします」という作品に抱く期待と不安

以上のことを踏まえると、この「彼女、お借りします」は異質な作品だ。男性作家が描く作品でありながら、ヒロインである水原千鶴が主人公である木ノ下和也に対して、最初から「好き」という感情を持っておらず、どちらかというと、彼女の心の移り変わりに重点を置いているように感じる。つまり女性的な作品なのである。これが違和感の正体だった。

だから、男性作家が女性的な作品に挑戦したとき、どうなるのか、ここが期待の部分。

一方で、不安な部分もある。

俺は先程、女性作家が描く「男性主人公」のラブコメが一番優れていると語ったが、もちろん男性作家が描く「男性主人公」のラブコメでも、面白い作品はたくさんある。最近だと「かぐや様は告らせたい」、「五等分の花嫁」、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」、「四月は君の嘘」があたりが挙がってくると思う。昔の作品であれば「タッチ」がすぐに思いつく。

この5つの作品は、お互いの好きという気持ちがどのように生まれたかについて、細かく描写はしていない。しかし、他の男性作家が描く普遍的なラブコメと大きく異なる点がある。それはズバリ、男性主人公にキャラパワー、魅力がある点がある。好きという気持ちに合理性を求める俺でさえ、細かい気持ちの揺れ動きの描写が足りなくても、主人公がかっこいいからヒロインは好きになるという単純な理屈だけで納得させられるのだ。

しかし、「彼女、お借りします」の主人公である木ノ下和也に今のところ魅力やかっこよさは感じないし、完璧超人であるヒロインの水原千鶴との釣り合いが取れているとも思えない。それなのに、そこまで合理性のない理由で、更科瑠夏というこれまた別の完璧超人のヒロインに明確に好かれている。色々な感想を見ても、ヒロインを称賛する声はあれど、主人公に対する声は批判的なものだらけだ。

釣り合いを取るというには、平凡な大学生と最上級のレンタル彼女という作品の構造的に難しい部分ではあるが、どうにか読者たちを納得させるような作品になってほしいものである。

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